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なぜコインにはギザギザがある?金・銀を削り取った“コイン・クリッピング”の歴史

 

普段何気なく使っている硬貨。

10円玉、50円玉、100円玉、500円玉など、種類によって表面のデザインだけでなく、側面にもさまざまな違いがあります。

その中でも気になるのが、硬貨の側面にある「ギザギザ」です。

「滑り止めのため?」

「デザインの一部?」

と思っている方も多いかもしれません。

もちろん現代の硬貨では、識別しやすくすることや偽造防止など、さまざまな役割があります。

しかし、こうした硬貨の側面に施された加工には、実は長い貨幣史の中で生まれた重要な理由があります。

その背景にあるのが、

「コイン・クリッピング(Coin Clipping)」

と呼ばれる行為です。

今回は、なぜ昔の人々が金貨や銀貨を削ったのか、なぜ硬貨の側面にギザギザが付けられるようになったのか、そして現代の硬貨へと続く「コインのセキュリティ」の歴史について分かりやすく解説します。


コイン・クリッピングとは?

コイン・クリッピングとは、簡単にいうと、

金貨や銀貨の縁を削り取り、削った金属を自分のものにする行為

です。

現代の硬貨を想像すると、

「そんなことをしたらすぐにバレるのでは?」

と思いますよね。

ところが、昔のコインは現在の硬貨ほど精密に製造されていませんでした。

特に中世から近世のヨーロッパでは、金属の円盤をハンマーなどで打ってコインを作る「打刻貨」が多く、形も完全な円形ではなく、縁も不規則なものがありました。

そのため、コインの縁を少し削り取っても、見ただけでは分かりにくかったのです。

例えば銀貨1枚に含まれる銀をほんの少し削り取ったとしても、コインそのものは普通に使えます。

つまり、

「コインはそのまま使えるのに、削り取った金属は別に手元へ残せる」

というわけです。

1枚ではわずかな量でも、これを大量に繰り返せば、かなりの量の金や銀を集めることができます。


なぜ金貨や銀貨を削ったのか?

その理由は非常にシンプルです。

金や銀そのものに価値があったからです。

現在のお金は、紙幣や硬貨そのものの素材価値よりも、「そのお金が使える」という信用によって価値が成り立っています。

しかし昔の金貨や銀貨では、

「このコインにはどれくらいの金や銀が含まれているのか」

ということが非常に重要でした。

例えば銀貨なら、

「銀がたっぷり入っている銀貨」

には、それだけの価値があります。

ところが誰かがその銀貨の縁を少しずつ削れば、コインとしての額面は変わらないのに、実際に含まれる銀の量は減ってしまいます。

そして削った銀は、

  • 別の銀貨の材料にする
  • 金属として売る
  • 装飾品などに利用する

といったことができました。

つまりコイン・クリッピングは、貨幣を使いながら、その中に含まれる貴金属を抜き取る行為だったのです。


コイン・クリッピングが経済問題になった理由

「少し削るくらいなら大した問題ではないのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、これが大量に行われると大きな問題になります。

例えば、本来10gの銀を含むコインがあったとします。

それを何度も削られれば、

10g → 9.5g → 9g → 8.5g……

と、少しずつ重量が減っていきます。

それでも「銀貨1枚」として流通してしまえば、コインを受け取った人は損をすることになります。

さらに人々が、

「この銀貨、本当に規定量の銀が入っているのか?」

と疑い始めれば、貨幣そのものへの信用が低下します。

実際、17世紀のイングランドではコインのクリッピングや偽造などが深刻な問題となり、商人がコインを秤に載せて重量を確認するほどの状況になっていました。

つまり、

「お金を受け取るたびに、本物かどうか、重さが足りているか確認しなければならない」

という状態です。

これは経済にとってかなり深刻な問題です。


そこで登場したのが「コインのギザギザ」

こうした問題への対策として登場したのが、

コインの側面を加工する技術

です。

側面にギザギザや模様を付けておけば、そこを削ると一目で分かります。

例えば側面に、

「||||||||||||」

という模様があったとします。

縁を削れば、

「|||| ||||||」

のように模様が途中で消えてしまいます。

つまり、

「削ったらバレる」

という仕組みです。

これが、現在の硬貨にもつながる「エッジ加工」の重要な役割の一つです。

硬貨の側面は、単なる飾りではありません。

昔の人々にとっては、

「このコインは削られていませんよ」

と証明するための重要なセキュリティ機能だったのです。


「ギザギザ」はコインのセキュリティだった

現在では、硬貨の偽造防止技術はさらに高度になっています。

しかし、

「硬貨の一部を加工して、改ざんされたら分かるようにする」

という考え方そのものは非常に古いものです。

側面のギザギザは、その代表的な例といえるでしょう。

さらに、イギリスではコインの側面に文字を刻む技術まで登場しました。

代表的なものが、

「DECUS ET TUTAMEN」

というラテン語です。

「装飾であり、保護でもある」といった意味を持ち、コインの側面まで確認することで、削られていないことを確認できる仕組みでした。

見た目を美しくするだけではなく、

「削られていないことを確認するための機能」

でもあったのです。


あのアイザック・ニュートンもコイン問題に関わっていた!

そして、このコイン・クリッピングの歴史を語るうえで非常に面白い人物がいます。

それが、

アイザック・ニュートン

です。

「万有引力のニュートンが、なぜコインの話に?」

と思いますよね。

実はニュートンは、イギリス王立造幣局で重要な役職を務めていました。

当時のイングランドでは、

  • コイン・クリッピング
  • 偽造貨幣
  • 摩耗した硬貨
  • 銀の流出
  • 重量不足のコイン

など、貨幣制度を揺るがす問題が発生していました。

そこで1696年から1699年にかけて、大規模な貨幣改革「Great Recoinage(大改鋳)」が行われます。

大量の古い銀貨を回収し、規格に合った新しい銀貨へ作り直すという大事業です。

ニュートン自身も造幣局の仕事として、偽造者やクリッパーの取り締まりに積極的に関わったことで知られています。

あのニュートンは、実は「お金の品質管理」にも関わっていたのです。


金・銀の価値とコインの歴史はつながっている

コイン・クリッピングの歴史を知ると、昔の貨幣がいかに「金属そのものの価値」と結びついていたのかが分かります。

例えば金貨なら、

「このコインにはどれだけの金が含まれているのか?」

銀貨なら、

「このコインにはどれだけの銀が含まれているのか?」

ということが重要でした。

これは現在の貴金属にも通じる考え方です。

金製品なら、

K24
K18
K14

などによって金の含有率が違います。

そのため貴金属の価値を考えるときには、

重量 × 品位 × 金属相場

という考え方が重要になります。

昔の人々がコインの縁から金や銀を削り取ったのも、結局のところ、

「金や銀そのものに価値がある」

と考えていたからです。


現代の硬貨にも受け継がれる「削らせない・偽造させない」技術

現在の硬貨は、昔のコインとは比べものにならないほど高度な技術で作られています。

特に日本の硬貨では、表面のデザインだけでなく、

  • 側面のギザ
  • 潜像
  • 微細な加工
  • 異なる素材の組み合わせ
  • 特殊な製造技術

など、さまざまな偽造防止技術が使われています。

その中でも「側面まで見る」という考え方は、コイン・クリッピングの時代から続いている重要な発想です。

普段何気なく見ている硬貨の側面にも、

「このコインは正しいものですよ」

と証明するための長い歴史が詰まっているのです。


まとめ|硬貨のギザギザには歴史がある

硬貨の側面にあるギザギザ。

一見すると単なるデザインに見えますが、その背景には、

金貨や銀貨を削り取る「コイン・クリッピング」

という歴史があります。

昔の人々は、金や銀の価値を利用してコインの縁を少しずつ削り、その金属を自分のものにしていました。

それが大量に行われると、貨幣の重量が減少し、通貨そのものへの信用まで揺らいでしまいます。

そこで、

「削ったらすぐ分かるようにする」

ために、コインの側面へギザギザや文字などの加工が施されるようになりました。

そして、その歴史の中には、なんとアイザック・ニュートンまで登場します。

つまり、今あなたが手に取っている硬貨の「ギザギザ」は、

金・銀をめぐる人間の欲望と、それに対抗する貨幣技術の歴史

の名残でもあるのです。

次に硬貨を手に取ったときは、ぜひ表面だけでなく側面もじっくり見てみてください。

何気ない「ギザギザ」の中に、数百年前から続くコインの歴史が隠れています。

そして、もしご自宅に古い外国コインや金貨・銀貨などが眠っているなら、

「これってただの古いコインなのかな?」

と思っていても、実は思わぬ価値が付いていることがあります。

古いコインや貴金属は、素材・品位・重量・年代・デザインなどによって評価が変わる場合があります。

気になるコインがありましたら、処分してしまう前に一度確認してみるのもおすすめです。

 

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